入谷駅の近く、言問通りから斜めの路地へ入ったところに、オレンジ色の看板が目をひくパン屋さんがあります。
休日の朝、朝食には遅いし昼食には早い時間。「コンビニでパンかおにぎりでも買って済ませようかな」と歩いているときにふと気になって入ってみたのが、スギウラベーカリーさんとの出会いでした。
私のいちおしコロッケパン
初めてスギウラベーカリーを訪れたその朝、まだあまり商品が出そろっていない中から2、3個選んでレジに持って行きました。すると、お会計の手を止めた奥様が、ちょうどできたばかりのコロッケパンをキッチンから持ってきてくださいました。
このときの心遣いとコロッケパンのおいしさが印象的で、ときどき買いに行くようになったのです。
私が思うこのコロッケパンのポイントは、サクサクの千切りキャベツです。
できたてのコロッケの衣との相性は言わずもがなですね。ダブルのサクサク食感が楽しいです。
ですが、少ししんなりしてきても、またおいしいのです。たっぷりのソースとコロッケの油が染み込んで、パンとの一体感が増しています。
細かく切られているので、かじったらキャベツがこぼれてくる、という「サンドイッチあるある」も心配いりません。
コロッケはじゃがいもがメインです。こしょうが少しきいた優しい味わいで、濃いソースとのバランスがちょうどよいです。
ジューシーなコロッケとしっとりロールパンをキャベツがつないで絶妙なハーモニーを奏でています。1つ160円、1日3個です。見つけたらぜひ食べてほしい、いちばんおすすめのパンです。
歴史ある手づくりパン屋さん
子どもの頃、近所に1つや2つはこんな店あったよね、と懐かしくなる店構えです。私は初めて見たとき、小学校の近くにあった駄菓子屋さんを思い出しました。
お店の中も、パンと一緒に思い出の品がたくさん並んでいます。なんだかレトロな看板もかかっていますね。それもそのはず。スギウラベーカリーは昭和20年から続く老舗だからです。
四谷で洋菓子屋さんを営んでいた創業者が入谷に移り住んだのは戦後のこと。元々パン屋さんだった建物を機材ごと譲り受けたので、洋菓子屋さんからパン屋さんに転向したのだそうです。
「そう考えると適当ですよね」と奥様はおっしゃっていましたが、私はむしろ、焼け野原を超えた時代の大変さと、そんな中、手にした環境を生かして営みを続けるバイタリティーに感動しました。
カレンダーの切り抜きらしい花の写真が所狭しと飾られています。お店の前にも鉢植えがあったので、お花好きなのかもしれませんね。
手書きの値札やこうした小物の1つ1つに人の温かさを感じます。洗練こそされていないかもしれませんが、なんだかホッとする空間です。
素朴でも確かなおいしさ
スギウラベーカリーのパンは小ぶりなサイズが多く、リーズナブルです。
いろいろなパンを食べたい人にはおすすめです。食事ほどがっつりじゃないけれど、ちょっと小腹を満たしたいときにもぴったりです。
どのパンもしっとり柔らかいのが特徴です。丁寧につくられたプロの味ながら素朴さもあり、「お母さんの味」や「おばあちゃんの味」を思い出す人も多いのではないでしょうか。
菓子パンにもおいしいものがたくさんあるので、いくつかご紹介します。
こちらは「チーズクリームサンド」140円です。
ふかふかでもっちりした食パンにクリームチーズをベースにしたクリームがたっぷり、表面にクッキーとカステラの中間のような生地を被せて焼いてあります。
甘さ控えめで少し酸味のあるチーズクリームと、こんがりと甘い生地が溶け合います。同じようなパンは他のお店ではあまり見かけませんし、クセになるので毎回買ってしまいます。
「クルミ蒸しケーキ」90円です。ほろっとした口溶け、ほんのり優しい甘さで飲み物がなくてもパクパク食べてしまいますが、牛乳と一緒に食べるのが断然おすすめです。
クルミの食感とほろ苦さもアクセントになっています。
食パン、ロールパン、コッペパンに好きな付け合わせを塗ってもらえるメニューもあります。
今回はロールパンにカスタードを付けてもらいました。上にも下にもたっぷり塗ってもらえます。これで80円は破格ですよね。
カスタードクリームはしっかり固めで、卵と牛乳本来の味が楽しめる手づくりならではのおいしさでした。
パンの種類がいちばんそろっているのは12時ごろとのことなので、いろいろと選びたい人はお昼ご飯の時間帯が狙い目です。ですが、早朝から夜まで開店されているので、通勤通学の途中で寄ることもできます。
食事にもおやつにも気軽に立ち寄れる、地域になじむパン屋さん。懐かしく安心した気持ちになる、いつまでも続けてほしいお店です。
スギウラベーカリー
住所:東京都台東区入谷1-1-9
アクセス:東京メトロ日比谷線「入谷駅」より徒歩約5分
営業時間:8:00~18:30
電話番号:03-3873-0875
定休日:日曜日