台東区の上野公園周辺には有名な博物館や美術館がたくさんありますが、不忍池の南のほとりにある「したまちミュージアム」はご存じですか?
江戸時代、町人が多く住んでいた下町地域。台東区とその周辺はその伝統や文化を引き継いだ地域のひとつ。そんな下町の歴史を後世に伝えるため設立されたのがこの施設です。特に変化の大きかった明治時代から昭和30年代までの資料が収蔵、展示されています。
長年、「下町風俗資料館」という名前で親しまれていたので、その名になじみのある人も多いはず。老朽化のため改修工事を行い2025年3月に「したまちミュージアム」と名称も新たにリニューアルオープンしました。
新しくなった展示場がどういったものなのか見学してきました。
上野公園の南に位置しアメ横へもすぐの好立地

最寄りの駅は上野駅。山手線や京浜東北線のほか、地下鉄各線なども乗り入れていて交通の便が良い場所です。特に京成の上野駅からが一番近く、目と鼻の先にあります。
建物の目の前は不忍池ですが、反対側に目を向けると有名な商店街アメ横もすぐそこ。自然環境と触れ合うのも買い物に行くのも近くで済んでしまうというなんともハイブリッドな立地です。
昭和30年代の下町の世界へ誘う展示室

下町ミュージアムは入館料が300円、小中高生は100円です。
受付を済ませてまず入ってすぐのところ、1Fにある再現展示室を見学していきます。こちらはデジタルを駆使した、スケールの大きな展示物で、実物の建物とバーチャル映像によって昭和30年代の下町の世界を体験できる仕組みになっています。
かつて都電が走っていた金杉通り、通りに面した表長屋、その奥の裏長屋がこの再現展示室の全容。長屋は実際にあった建物を再現していて、外の風景は投影したアニメーション映像で表現しています。
外の様子の映像は、朝から夜までの時間の移り変わりを見ることもでき、長時間見学していても飽きないつくりになっています。更に季節によって投影する映像は変わるのだそうです。

商店も建ち並ぶ通りは、都電や車が走り通行人や行商人が行き交う姿も。
室内には長年使っていた家具や調度品を配置

表長屋の提灯屋は、台東区坂本(現・根岸三丁目)で営業していた建物を忠実に再現しています。
この近辺はモノづくりの職人が多く暮らしていました。実際に、靴を脱いで建物の中に入ることもできます。玄関に面した上がりかまちで職人が提灯づくりを行っていた空間がとてもリアル。
筆の置き場が空き缶というのも、気取らない下町の職人の心意気を感じさせます。これらの家具や道具は触って観賞することもできます。どれも実際に使われていた古い物なので丁寧に扱って、無くさないように元の場所に戻すよう心がけてくださいね。

仕事場のその奥は生活スペースです。昔懐かしきちゃぶ台も置いていました。今で言うところのリビングルームですね。更にその奥には台所のキッチンスペース。鍋や釜などがあり、氷を使った昔の冷蔵庫も設置されています。
冷蔵庫の扉を開けると氷のオブジェがしっかりと入っていました。こういった発見がこの展示の醍醐味のひとつです。

室内から見た外の様子です。白い犬が歩いているのがなんとものどか。
ちなみに館内の撮影は自由ですが、フラッシュなど照明を使った撮影や三脚、一脚、自撮り棒を使った撮影などはNG。
表長屋の奥にある裏長屋も忠実に再現

表長屋の裏口から外に出ると、その先には裏長屋があります。
実際にあった紙芝居屋の自宅を再現していて、こちらの建物も商売道具から生活用品まで緻密に再現展示されています。室内のタンスの中を覗いてみるのも楽しい展示室です。
この家に住んでいた紙芝居師が紙芝居の実演をしに来ることもあるのだそう。ここを見てどう思うのか、ぜひお話を聞きたいものです。
大人にはどこか懐かしく、子供には経験したことが無い昔の暮らしぶりを知ることができるユニークで価値のある展示物です。
ほぼ寄贈品、当時の道具や品物の展示室

さて、昭和の生活を追体験したあとに2Fの展示室に向かいます。
ここは常設展示室で、時代に沿って当時の資料や下町で使用されていた道具や品物が展示されています。展示品の約9割が寄贈品とのこと。実際に使用されていた物ばかりです。
季節ごとにテーマを決めた展示替えも一部で行っているので、季節の移ろいを感じることもできます。
リニューアル後初の企画展示は「下町ってどんな町」
3Fは企画展示室と下町情報コーナーがあります。
今回訪れた際の企画展示のタイトルは「下町ってどんな町」。下町ってどんな町なのか、どんな人々が暮らしていたのか。そんな疑問の答えを導いてくれる資料などが展示されています。

一方、下町情報コーナーは大きな窓から不忍池を眺められる開放的なスペース。棚に置かれているけん玉やそろばんなど昔の玩具や道具を手に取って使うことが出来ます。

スペースの一角には、したまち資料検索のタッチパネル端末が設置されていて、展示資料などを詳しく調べることもできます。
気になった展示物があったら利用してみてください。
1年間で2回以上来館するとお得になる600円の年間パスポートも用意されています。気軽に立ち寄ることができる博物館としておすすめです。
お土産コーナーには下町ミュージアムのロゴをあしらった風呂敷や、かわいいデザインのてぬぐいなども販売されていますので訪れた際はぜひ見てみてください。
したまちミュージアム
住所:台東区上野公園2番1号
アクセス:JR・東京メトロ・京成電鉄「上野駅」から徒歩約5分
TEL:03-5846-8426
営業時間:9:30-16:30(入館は16:00まで)
休館日:月曜日(祝休日と重なる場合は翌平日)、12月29日から1月3日、特別整理期間など