95年前から癒し続ける。下谷のカフェ「rébon快哉湯」

昭和通りから1本入った路地にある「rébon 快哉湯(かいさいゆ)」さん。「快哉湯」というのはこの建物の名前です。
では、「rébon」とは?その答えを知るべく、中に入ってみましょう。

靴を脱いで上がります。
「女」と書かれた引き戸を入ると・・・

中にはちょっと不思議な空間が広がっています。「rébon快哉湯」は、昔ながらの銭湯「快哉湯」をリノベーションしたカフェなのです。

入り口とカウンターがあるのは女湯の脱衣場。そして隣には、仕切りを挟んで男湯の脱衣場も、もちろんあります。

レトロとモダンのマリアージュ

入ったときの第一印象は、「思ったより広い!」でした。

その理由の1つが高い天井です。このような格子状の天井は、東京の伝統的な銭湯の特徴です。

一方で、四角い照明はユニークで現代的な感じがします。見上げたとき、2種類の四角が自然に調和しています。

それから、女湯・男湯を仕切っている壁の大きな鏡張り。男湯側に入ったとき、最初は鏡だと気が付かず、女湯側とつながっているのかと錯覚してしまいました。外観からは想像できないくらいの奥行きと開放感を感じます。

「rébon 快哉湯」のコーヒーは、専門的な研修を受けたスタッフさんがこちらの焙煎機で自家焙煎しています。最初からそこにあったかのように馴染んでいます。コーヒーの味を左右する焙煎機。その排気筒は、銭湯にとっての煙突のようだと思いました。

お手洗いの男女マークがかわいらしくて、思わず写真を撮ってしまいました。文字には入り口の引き戸にあった「女」「男」のデザインが生かされています。

浴場はワーキングスペース

脱衣所はカフェスペースになっていますが、肝心の浴場は、一体どこにあるのでしょうか。

答えは、この扉の先です。奥にペンキ絵が見えますね。浴場は、快哉湯をリノベーションした建築会社のオフィスになっています。

カフェの店員さんに声を掛ければオフィス内を見学させてもらえます。
外から覗いただけではわかりませんが、中に入ると湯船が残っているのを確認できます。

こちらも脱衣所以上に天井が高いです。湯船の前に立って壁を見上げていると、ここが銭湯だったことを実感します。

日の光に紛れて、なんだか湯気が見えてきそうです。お客さんの談笑する声や、桶や水の音も、響いてくる気がします。手を叩いてみたくなりましたが、お仕事の邪魔になってしまうのでさすがにやめておきました…。

アイスとコーヒーのマリアージュ

「rébon 快哉湯」の看板メニューは、アイスクリームとコーヒーを一緒に楽しむ「マリアージュ」プレートです。4種類のプレートはそれぞれ、1番合うように考え抜かれた組み合わせになっています。

今回は「キウイ×グアテマラ」を選びました。

このメニューの醍醐味を味わうべく、アイスと一緒に口に含んでみます。
キウイとグアテマラコーヒーの酸味がぴったりです。アイスは単独で食べるとクリーミーな甘さが強いですが、コーヒーと一緒だと、さわやかな甘酸っぱさが引き出されます。一方で後味は、アイスのおかげで、まったりしたコクが残ります。

コーヒーはホットかアイスを選べます。今回はホットにしたのですが、コーヒーの温度が下がってくるにつれて、アイスの溶け方がだんだん変わってくるのがおもしろかったです。私は中盤ぐらいまで食べすすめた頃の、じわじわとろけるような食感が気に入りました。
最後に口に残るキウイの種をプチプチ噛むのも楽しいですね。

時を超えてつなぎ続ける

「rébon 快哉湯」では、「つながり」がとても大切にされているのだと感じました。

まずは空間のつながり。2つに分かれたカフェスペース、キッチン、オフィススペースの間は天井までに隙間があったり、ガラス張りだったり、仕切られてはいるけれど、閉鎖されているわけではありません。
安心、集中できる環境でありつつ、お互いの様子がわかったり、声が聞こえてきたりするちょうど良い距離感です。

わざわざカフェに行ってくつろぎたい、勉強や作業をしたい気分のときって、ちょっとした「人肌」が欲しいのではないのでしょうか。

私たちが銭湯に求めるものと、似ていませんか。

そして時間のつながり。

完全に作り替えてしまうのではなく、銭湯の名残があらゆるところに散りばめられています。

「快哉湯」ができたのは1928年だそうです。愛されて、残そうと努力されてこなければ、木造の建物がこんなに長く生き残ることは難しかったでしょう。

開店前に店内を見せていただいたのですが、帰る時には看板が出て開店準備が整った状態でした。

来たときにはついていなかった入り口の電飾が灯っているのを見て、「この建物の命が光っているようだな」と感じました。

「rébon」の意味、もうわかりましたよね。銭湯としての歴史を一度は終えた「快哉湯」が「reborn」。「人々をつなげる」という役割はそのままに、生まれ変わった場所なのです。
訪れれば、温かいパワーをもらえること間違いなしですよ。

rébon快哉湯
住所:東京都台東区下谷2-17-11
アクセス:東京メトロ「入谷駅」4番出口より徒歩2分、京浜東北線 / 山手線「鶯谷駅」より徒歩9分
TEL:03-5808-9044
営業時間:10:00~18:00
定休日:不定期(詳細はSNSをご覧ください)

※記載情報は取材当時のものです。変更している場合もありますので、ご利用前に公式サイト等でご確認ください。