あれも毒これも毒!上野の国立科学博物館で学ぶ毒の二面性

秋といえば食欲の秋、スポーツの秋…個人的に今年は「芸術の秋」「読書の秋」な気分です。

ここ数年、人の集まる屋内施設にはなかなか出かけられなかったので、その分今年はいろいろ博物館や美術館に出かけて、学びたい。

そんな気持ちにぴったりな特別展が上野公園の国立科学博物館ではじまったので、さっそく行って来ました!

コノセカイハ、ドクダラケ。

11月1日に開幕した特別展はその名もずばり「毒」!

毒と聞くと毒キノコや毒ヘビなどを思い浮かべますが、毒自体は目で見ることは難しい物。一体どんな展示になるのか、想像がつきませんでした。

とくにうちの息子はまだ保育園生。男児にありがちな「強い生物」への興味から毒を持った生き物を図鑑やテレビ番組を通して学び、この「毒」展も楽しみにしていました。

まだひらがなとカタカナが読めるくらいの子も楽しめるかな?と少し心配していました。

見えないものの見える化、わかりやすさがすごい!

しかしそんな心配は杞憂でした。

今回の展示は大きく5章で構成されています。文字だけでなく図や映像、標本などさまざまな説明があり非常に分わかりやすい。見えないものを見える化する工夫を随所に感じました。

冒頭の第1章「毒の世界へようこそ」では、「そもそも毒とは?」「毒ってどんな種類があるの?」という来場者の抱く初歩的な疑問を、映像を使った展示で解消してくれます。

「生活にある毒」という展示では猫の毛やあじさいなど、意識していない日常の中にも毒があふれていること、毒は誰にとっても身近なものであることがわかりました。

鮮やかな色彩、造形の多様さ、そして機能美…毒は怖いけど美しい?

続いて第2章「毒の博物館」では地球上にあるさまざまな毒を持つ生き物や物質を紹介。

とくに毒を持つ生物は、はく製や模型、実物が豊富にそろっていました。警告色の鮮やかな色合い、進化の末に得たであろう環境適用した多様で効率的な造形は美しさを感じるほど。

とくにオオスズメバチ(約40倍)やハブ(約30倍)の巨大模型は圧巻!ぜひ実物を見てほしい迫力です。

全章を通じて、目で見て楽しむ展示も豊富ですが、解説の深さも素晴らしい。実は哺乳類で毒を持っている生物は少ないこと、毒の研究をすることで抗がん剤が生まれたことなど、大人も必ず発見があるのではないかと思います。

図録の「禁断の書」感

あまりにも素晴らしくて図録を買ってしまいました。

今回の展示を振り返れるだけでなく、さらにコラムなどが加えられ深堀されたこちらは全172ページ、お値段なんと2,400円!こんな箔押しされた「禁断の書」みたいな見た目なのに…?

全員におすすめしたい一冊です。

研究員さんのインタビューがおもしろい!

科博の特別展、最後のお楽しみは特別展に携わった研究員さんのインタビュー。

毎回研究員さんの人となり、そして研究分野への偏愛ぶりが分かってわくわくするコーナーです。

今回の特別展では生物から医学、鉱物学で多岐にわたる分野が網羅されていましたが、それもそのはず。科博にある5つの研究部から選出された計9名で担当されたのだとか。

そんな各分野のエキスパート9名のインタビューを読み比べられるのがこちらのコーナー、特別展の最後を飾るのにふさわしい読み応えがありました。

とくにクスっと笑ってしまったのは植物研究部の田中研究員の一言。

世界最強の毒草と呼ばれるゲルセミウム・エレガンスに対して「葉3枚ほどであの世行きです。そんな“毒草”にエレガンスって。」知性あふれるこのツッコミに2022年のツッコミ大賞を送りたい!

あらゆる科学分野の毒が網羅された盛りだくさんの特別展「毒」、大人も子どももみんな楽しめる、そして役に立つかもしれない、知的好奇心を刺激するおすすめの特別展でした。

国立科学博物館(上野本館)
住所: 東京都台東区上野公園7-20
アクセス:
東京メトロ銀座線「上野駅」徒歩5分
JR「上野」駅(公園口)から徒歩5分
東京メトロ銀座線・日比谷線「上野」駅(7番出口)から徒歩10分
京成線「京成上野」駅(正面口)から徒歩10分
TEL:050-5541-8600
開館時間:9:00-17:30(入館は16:30まで)
休館日:毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は火曜日)
年末年始(12月28日~1月1日)

特別展「毒」
期間:2023年2月19日まで
入場料:一般・大学生 2,000円/小・中・高校生 600円
※オンラインによる日時指定予約が必要です。
https://www.dokuten.jp/

※記載情報は取材当時のものです。変更している場合もありますので、ご利用前に公式サイト等でご確認ください。