台東区竜泉にある「一葉記念館」は、日本を代表する女流作家である樋口一葉の生涯と作品を堪能できるスポットです。
日本初の女性作家の単独文学館

都営地下鉄日比谷線の三ノ輪駅から、徒歩約10分。
一葉記念館は閑静な住宅地の中にあります。
一葉記念館が設立されたのは昭和36年(1961)5月12日のこと。
地元住民の熱意によって、当時日本では初めての女性作家の単独文学館としてオープンしました。
平成18年(2006)11月1日には、老朽化と樋口一葉の新紙幣採用を理由に、リニューアルしています。
モダンでありながらも和を感じさせる外観は、下町の雰囲気にマッチしていました。
館内は地下1階・地上3階の4階建てで、3つの展示室を備えています。
常設展では一葉の生涯と作品を知れる
2階と3階の常設展では、一葉の人生史と、明治の女流作家の地位を切り開いた数々の作品について学べます。

実際に一葉が愛用していたとされる文机(複製)を見ることもできます。
この小さな文机で歴史に名を残す作品が生まれたと思うと、感慨深い気分になりますね。

貴重な一葉直筆の原稿や手紙も。
写真は一葉が妹のくにに宛てて書いた手紙です。
流れるように美しい文字や、家族を気遣う文面から一葉のひととなりがわかります。
他にも、未定稿や竜泉で商いをしていたときの仕入帳など、一葉直筆のアイテムがたくさん展示されています。
写真撮影禁止の展示物もあるので、撮影をする際は注意しましょう。

一葉の名作は映画や舞台にもなっており、上演された舞台の模型やパンフレットも展示されていました。
模型を見た上で再度作品を読むと、より物語の背景や街の様子がイメージしやすいですね。

一葉と言えば、5000円札を想像される方も多いはず。
一葉記念館には、最後に発行された5000円札が展示されています。
なぜ一葉が紙幣に選ばれたのか、一葉記念館を巡るとその功績の大きさが知れるでしょう。
12月21日まで特別展を実施中
一葉記念館では、12月21日(日)まで「一葉が暮らした下谷龍泉寺町」という特別展を実施しています。
家計を支えるために明治26年に現在の竜泉に移り住んだ一葉。
過ごした10ヶ月で得た経験は、その後の作品に大きく影響しました。
なかでも名作「たけくらべ」の舞台は竜泉。
一葉が実際に吉原遊郭で働く人々をモデルにしたとされています。

特別展の展示室に入るとまっさきに目に入るのが、一葉が住んでいたエリアを再現した模型。
一葉自身も荒物駄菓子屋を営んでいましたが、周囲もさまざまなお店が密集していたようです。
他にも竜泉や隣接する吉原遊廓の当時を垣間見れる写真や、絵も展示されていました。

特別展には、一葉の近しい人たちによる回想も展示されています。
半井桃水や三宅花圃といった、一葉に影響を与えた人物の回想からは一葉への敬意と愛を感じました。
勝ち気な性格でありながらもよく泣く人物であったというエピソードや、有名な肖像画より実際は丸顔であったという話は興味深かったです。

特別展には、「たけくらべ」の未定稿も展示されていました。
一葉の名を明治の時代に轟かせ、後世にもその名を残すきっかけとなった作品です。
塗りつぶされたり文字に線が引かれたりしており、熟考しながら作品を書いていたことが伝わります。
竜泉での生活で作家としての才能が開花
一葉は竜泉で庶民の暮らしや吉原遊廓で働く女性を知ったことで、自分が作家として何を書くべきかを再認識したとされています。
転居後は24歳の若さで亡くなるまで筆を握り続け、「奇跡の十四ヶ月」と呼ばれる期間にさまざまな作品を残しました。

そんな一葉の功績をたたえ、一葉記念館の前には記念碑が建てられています。
一葉の死後、さまざまな女流作家が登場し、日本の文学界は新たな時代を迎えました。
確かに一葉の存在が、その後の女流作家の道を切り拓いたと言えるでしょう。
樋口一葉だけでなく、台東区・竜泉の貴重な歴史を知れる展示ですので、ぜひ足を運んでみてくださいね。
一葉記念館
住所:東京都台東区竜泉3丁目18-4
アクセス:東京メトロ日比谷線「三ノ輪駅」から徒歩約10分
TEL:03-3873-0004
営業時間:9:00-16:30
定休日:月(月曜日が祝休日の場合は翌平日)、年末年始および特別整理期間
駐車場:なし




















