以前からずーっと気になって、勇気を出せずに行けなかった場所があります。
場所は三ノ輪駅から昭和通りに出てすぐ、牛丼屋とスーパーマーケットの間です。
え?こんなところに、と二度見すること間違いなしのあやしい、いいえ謎めいた雰囲気。
壁面に掲げられた看板それがここ、「うしろむき地蔵尊」なのです。
さあ、勇気を出して
なぜお地蔵さまを拝むのに、勇気がいるのかですって?
うーん、だってここ本当にお参りする場所なのか、あやしいと思いませんか?
でもですね、怖いもの見たさと言いますか、好奇心には勝てません。勇気を出して進んでみたいと思います。
周りをキョロキョロし、牛丼の香りに包まれながら歩みを進めます。「あの人、騙されてるわよ!ヒソヒソ」って誰か笑っていませんよね。
まるで異次元
ドキドキしながら、進みます。本当にここ、入っても良い所なのでしょうか。
訝りながら若干体を斜めに傾けつつ、細い脇道に入ります。
そこを抜けると…なんとまあ、明るい空間が広がっているではありませんか!
今までのあやしい細道から一変、まるで異次元に連れてこられたかのような錯覚に陥ります。ほこらの横にある階段を上がると、これまた不思議な空間が広がっています。
ここだけ空が急に広くなったように感じることができ、やはり異空間なのかなと思ってしまいます。これは、ぜひみなさまの目で体験していただきたいです。
後ろを向いているわけではない
その異空間にあっけにとられていますと、お地蔵さまちゃんといらっしゃいました。
うしろむき地蔵ですからね、後ろを向いて…いませんね。どういうことなのでしょう?
ふと横には、うしろむき地蔵尊の縁起が記されていました。
要約すると、その昔日光街道の旧道に面していたお地蔵さまですが、新しく道が拓かれたことにより新道からは後向きになってしまった。向きを変えたところ、「私は旧道の西を向いていたいんじゃ」と主僧と石工の夢に出てきため、あわてて後向きに戻したということだそうです。
そのため、当時の参拝者たちは一夜にしてお地蔵さまの向きが変わったことに驚き、背面地蔵として、祀られるようになったということです。
お地蔵さまといえば、笠をかぶせてくれたおじいさんに恩返しをする笠地蔵の昔話を思い出しますが、なにやらお地蔵さまって不思議な話があるものですね。
それにしても新道とは昭和通りのことでしょうが、なぜ通りに面してきちんと立派な参道がないのか不思議でなりません。
正面には入口が存在します
さてこの背面地蔵尊、きちんと旧道側には立派な入口がありました。
天台宗のお寺、薬王院です。
なあーんだ、こちらから入れば良かったと思ってしまいますが、いえいえ。
やはり背面からあの細道を通り抜けてお目にかかるのが、スリリングでご利益もありそうです。
今でも西を向いて旧道を見守るお地蔵さまは、白くなめらかで優しいお顔をしています。
また向きを変えようとしたら、今度は誰の夢に出てくるのでしょう?
ぜひみなさまも、この不思議な「背面地蔵尊」を訪れてみてはいかがでしょうか。
薬王院 背面地蔵尊
住所:東京都台東区根岸5-18-5
アクセス:東京メトロ日比谷線三ノ輪駅より徒歩2分