昔、千住のまちは葱(ネギ)の一大産地だったそうです。江戸時代、参勤交代で関西から江戸に初めて持ち込まれた葱は、やがて庶民の食べ物として定着し、千住で盛んに栽培されるようになりました。
江戸が東京となり、都市化が進むなかで、葱栽培も限定的なものになっていきました。そのようななか、消えつつあった江戸千住葱を復活させ、今に伝えているのが、今回ご紹介する千住葱専門卸「葱善(ねぎぜん)」です。
業務用卸なので、ふだんは飲食店や有名デパートなどにのみ卸しています。しかし、形が不揃いなもの、通常の卸ラインにはのせられないものを、一般のお客さま向けに限定で販売していると聞き、さっそく直売所にいってきました。
駅から徒歩約10分、千束学校の目の前
お店は、東京メトロ日比谷線入谷駅から徒歩約10分の場所にあります。お店までのルートはいくつもありますが、似たような路地が入り組んでいるので、一番間違いのないルートで行きます。
入谷駅を出たら、目の前の言問通りを浅草に向かって行きます。国際通りとの大きな交差点に出たら、左折して国際通りをすすんでいきます。西浅草三丁目の交差点を過ぎ、五叉路に出たら、斜め右の路地へと入ります。ここからは、千束小学校を目指して進みます。お店は、千束小学校の西側校門の目の前です。
「いらっしゃいませ!」と、明るく元気な声に迎えられました。竹野さんです。
竹野さんは、千束のまちで生まれ育ち、現在は直売所での販売のほか、商品開発や広報のお仕事をされています。
冒頭の、関西からやってきた葱の話を教えてくださったのも竹野さんです。
秋から冬にかけてだけの味!江戸千住葱
店頭を見ると、太くてつやがある、立派な葱が並んでいます。
「10月から出荷し始めた江戸千住葱です。秋から冬にかけてのみの商品です。これから冬にかけて寒くなっていくと、どんどん甘みが増してきますよ」とのこと。「普通の葱は、通年で出荷できるように品種改良されたものです。一方、江戸千住葱は、江戸で栽培されていた葱のタネを、栽培農家さんの協力のもと10年以上かけて試行錯誤を繰り返して、伝統的な栽培方法を復活させたものです。普段皆さんが召し上がっている葱より、風味や辛みがしっかりしています。」と、竹野さんは言います。
江戸千住葱は冬にしかないため、それ以外の時期は、140年続く老舗ならではのネットワークを駆使し、プロの目利きによって上質な葱を選び抜いたものにのみ「葱善千住葱」と社名を冠して、1年を通して高品質な千住葱を安定的に提供しているそうです。
葱善さんのこうした姿勢に、味と品質に徹底的にこだわってきた誇りを感じます。
太い縄で括られた葱が目立っていました。江戸千住葱の花束ならぬ、葱束だそうです。常連さんだというお客さまは、お世話になった人や近所の方に配るからと言って、葱束を1束買って行かれました。
店頭には葱だけでなく、近隣の農家さんから直接仕入れた野菜や、千住葱を使った味噌などの惣菜を販売しています。
「葱味噌は私が作ったものです。葱を使ったレシピも好評で、母が開発しているんですよ。」と竹野さん。
料理が大好きな私。自分のために、江戸千住葱を買っていくことにしました。葱味噌、葱善オリジナルの手拭いまで買ってしまいました。
「この手拭いも、昭和初期頃の版を復活させて、日本橋の老舗手拭い専門店に作っていただいたんです。」とのこと。
ちょうど直売所3周年ということで、数量限定で配布しているというロゴ入りクッキーまでいただきました。
江戸の葱に江戸の手拭い…このまちに流れた永いながい歴史のロマンを感じつつ、お店を後にしました。
甘い!爽やかな香りと、とろとろの食感
家に帰ってきて、あらためて江戸千住葱の大きさに驚きました。本当に立派な葱です。大き過ぎて台所の作業台からはみ出してしまうほどです。
葱善さんおすすめのレシピサイトを見ていて、そのまま焼いて食べてみたいと思い、鶏むね肉と一緒にじっくり焼きを作りました。じゅわっと葱のうま味があふれて、味付けいらずでおいしかったです。
加熱すると甘みが増すならと、グラタンも作りました。玉ねぎの代わりに江戸千住葱、なんともぜいたくな大人のグラタンです。
葱味噌は、やはり白いご飯がイチオシです。わが家では、白味噌仕立てのローストポークに添えていただきました!
すっかり江戸千住葱のファンになってしまいました。私も葱束を買って、お友だちや実家におすそ分けしたくなりました。
お料理が楽しくなること間違いないです!
千住にいらしたら、ぜひ立ち寄ってみてくださいね。
葱善
住所:東京都台東区千束3-6-10
アクセス:東京メトロ日比谷線「入谷駅」から徒歩10分・東京メトロつくばエクスプレス「浅草駅」から徒歩10分
営業時間:木曜、金曜10:00-13:00、土曜10:00-12:00
定休日 :月曜〜水曜
※催事等により営業日時が変わることがあります。公式インスタグラムを確認してください。